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エコリゾート赤目の森の伊井野雄二さん

 【NPOと行政の真の意味での協働とは】
 前日、津には珍しく降った雪が残る1月30日、三重県内でのNPO法人格取得第1号である名張市の「赤目の里山を育てる会」へ現場研修に行って来ました。
 同会の運動の始まりは、ゴルフ場計画でした。運動のリーダーであり、現在、会の事務局長を務める伊井野 雄二さんは「反対運動だけでは勝てない」と判断し、地域の人の就労の場提供や運動支援体制の拠点をめざして、ペンション「エコリゾート赤目の森」を建設しました。
 私募債を発行し、各方面に協力を要請したところ、里山保護の目的が共感を呼び、大阪や名古屋からも協力者が集まりオープン。地権者の中にも理解者が現れ、ゴルフ場計画を挫折させました。
 しかし、その後、産廃処分場計画が表面化し、「土地の一部を取得しないと、里山は守れない」としてナショナル・トラスト運動に発展させてそうです。
 以下に、伊井野さんに伺ったお話で印象に残ったことをお伝えします。

・かつて、行政が第一セクター、企業が第二セクターでその二つがいっしょになったものが第三セクターといわれたが、不要なものばかりつくったりしていた。
・NPOが手がけるのは、同じ第三セクターでも「すき間」事業である。行政は、公
平・平等が原則であり、企業は儲からないことには手を出さないのでNPOセクターがやるということになる。
・行政の仕事は税金を原資にしているが、我々は活動資金を自ら稼いでいる。
・「里山総合講座」で「里山保全リーダー養成講座」「子ども里山探検隊」「里山レディース講座」を実施しているが、参加者の目的は<自己実現>である。
・行政は各種のニーズに追いつかない。最近、よく「協働」ということばが叫ばれ
るが、行政はどうあろうが、NPOは<自主自律>であり、<対等・平等>を参加の原則にしている。
・よって、安上がりな「下請け」として利用されることは協働とは言わない。
・我々が行政に求めるものは、補助金といった金銭面の支援ではなくて、「信頼」
の付与である。事業を展開していくのに、行政のお墨付きがあればスムーズに行くことが多い。例えば「足長育英会」は年間予算が3億円あるが、これまで信用
を築いてきたからである。 
・我々は、知恵を絞り、いろいろな政策提案をしているので、それに行政が参画して欲しい。アイデアといえば、私の出身の鳥取県智頭町では郵便局員がお年寄りの身の回りの買い物を手伝っている。
・いろいろな意見に対して、賛成、反対といった二者択一ではなく、第三の道を探
ることが「オルタナティブ」という考え方である。
・よく誤解されているが、木を切らないことが里山の保全ではない。木を切らない
で放っておくと、これ以上は変わりようがないという「極相」状態になる。
・「萌芽更新」といって多くの木は切った株から芽を出すので、切ることによって日本の原風景である里山が守られる。
・NPOの収入には、1会費 2寄付 3補助 4事業の四つがあるが、事業につい
ては1/4に留めるのが原則である。
・環境にやさしいということでは暖房にペチカを使ってもいいが、手間がかかりすぎ暖まるまでに時間がかかるので、ペレット型ストーブにしている。
・「荒れた田畑を守れ」というだけでは、だめなので便利な機械を導入することも考える必要がある。
・子どものファミコンについても、それより面白いもので外で遊べるものがあれば、子どもは自然とそこにいく。ただ禁止するだけでは任天堂に対抗できない。

 ~~~~~~~~~~~~ここまで講演~~~~~~~~~~~~~~

 伊井野さんのお話を聞いて、税金から給与をいただき、税金を元に事業をする自治体の職員として自らのミッションを果たすことに身の引き締まる思いでした。
 よく「行政が旗振りしての事業への市民参加」ということが言われますが、これ
は逆であって「住民の方の主体的な活動への行政の参画」です。
 行政にあれこれ指図されたり、補助金をもらわなくてもNPOの方は自らの知恵で活動資金も捻出しているのです。
 行政がやるべきことは、プラットホームといった共通基盤の整備や伊井野さんが
言う「信頼」の付与という後押しです。地球環境に良いものであれば行政が認定し
て、販売促進のお手伝いをすればいいのです。これなら予算があまりなくても可
能です。
 それと運動は「精神論」では機能しないということです。例えば都会人は田舎の
風景で癒されたくても、便利な生活は捨てたくないのでそれに応える設備は必要だということです。




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